先日、山田孝之さん、ビートたけしさん主演のテレビ東京開局記念日映画『破獄(はごく)』を鑑賞しました。
『脱獄モノ』ということでバリバリのサスペンス系を期待していましたが、受刑者の佐久間清太郎(演:山田孝之さん)と看守の浦田進(演:ビートたけしさん)の関係が徐々に近くなっていく人間模様にとても惹きつけられました。
そして、拷問や絶望などのあらゆる表情を見せてくれた山田孝之さんの演技が神でした!
今回は、神がかっていた山田孝之さんのシーンとともに、佐久間の元ネタとなった白鳥由栄の紹介、脱獄モノ好きの方の為に佐久間が行った脱獄方法をご紹介します。
ページ内目次
あらすじ
昭和17年。東京・小菅刑務所の看守部長・浦田進の耳に、秋田で無期懲役囚が脱獄したとの情報が入る。
脱獄した無期懲役囚は、かつて小菅刑務所にいて、情に厚い浦田だけには従順だったが、青森刑務所でも脱獄した経歴を持つ危険人物、佐久間清太郎だった。
ところが3ヵ月後、佐久間は浦田の家に訪ねて来る。
浦田に、人間扱いしない秋田の看守を訴えてほしいと言う。
しかし隙をついて浦田は通報。囚われた佐久間は網走刑務所へ収監される。
さらに、浦田も網走刑務所の看守長として転任することになる。
こうして、浦田と佐久間の長い戦いが始まる。
佐久間が塩湯に浸かるシーンの山田孝之の演技が神
この映画、随所に山田孝之さんの演技に惹きつけられてしまいましたが、私が一番印象に残っているシーンは、佐久間が網走刑務所に来て初めての冬に後ろ手錠されている手を浦田が身体が温まるよう塩湯に入れるシーンです。
この時に塩湯に入れる代わりに脱獄しないことを浦田に約束させられる佐久間でしたが、それまでジタバタしていた佐久間が塩湯に浸かった瞬間、なんとも切なく情けない表情をします。
その後、佐久間は号泣するわけですが自分の無力さとか悔しさとか、色々なものを感じました。
最近の、山田孝之さんと言ったら『賢者ヨシヒコ』や『全裸監督』などのコメディ色が強い印象がありますが、破獄で演じた馬鹿正直で切ない役にも定評がありますよね。
バラエティに出るとイメージがついちゃうので控えるとか、悪役やり過ぎてイメージがとかいう俳優さんの話聞くけれど、あそこまでふざけたCMも役も変顔もいくらでもする山田孝之なのに、
「破獄」のシリアスな演技に本当に見入ってしまって、凄い役者さんはそんなの関係ないんだなって。— ヒヂリンゴ・聖 (@hiziringosayaka) 2017年4月13日
私も改めて、俳優としての山田孝之さんにとても魅力を感じました。
山田孝之演じる佐久間の元ネタは白鳥由栄
山田孝之さんが演じた佐久間清太郎の元ネタは白鳥由栄(しらとりよしえ)になります。
白鳥由栄は『昭和の脱獄王』とも呼ばれていて、世界仰天ニュースでも特集されています。
身体能力の高さを発揮して脱獄していますが、一日に120km走れるや、全身の関節を脱臼させることができる、手錠を引きちぎる事ができるなどの伝説が残されています。
性格は頑固で不器用と言った面もありました。
映画では、その不器用さから、どんどんと苦境に立たされていってしまいます。
ちなみに白鳥は、4度の脱獄後に捕まったあとは模範囚として服役し1961年に仮釈放、1979年、71歳の時に心筋梗塞でこの世を去っています。
佐久間が行った脱獄
破獄では佐久間は4度の脱獄しています。
4度の脱獄を方法と共に時系列でご紹介します。
【1回目】昭和11年
映画では登場していませんが、1回目の脱獄は昭和11年の青森刑務所になります。
この時は、 針金で手製の合鍵を作って脱獄しています。
ちなみに、この時の容疑は強盗殺人になります。
元ネタである白鳥由栄いわく『殺していない』と最後まで身の潔白を主張していたとのことです。
その後の、佐久間の行動から察するに本当に殺していないものだと感じます。
【2回目】昭和17年
秋田刑務所の天井に穴を開けて大雨の中脱獄します。
この時の脱獄した理由は看守からの暴行に耐えられなくなってとのことです。
その後、浦田の家を訪ねた佐久間は、浦田の裏切り(?)で通報されてしまいあえなく刑務所へと送られることになります。
ちなみに天井までは壁に手と足を付けてヤモリのようにして上ったと証言しています。
【3回目】昭和19年春
参照元:網走監獄
浦田の通報により網走刑務所に収監された佐久間ですが、3回目は窓格子のボルトに味噌汁を付けて錆を促進させて窓を破って脱獄しています。
この時の佐久間が秀逸だったのは、本来の窓からの脱獄をカモフラージュする為に、わざと床下からの脱獄で見つかることです。
そして、すぐに本来の目的だった窓からの脱獄に取り掛かったわけです。
浦田だけは釘1本で床下から脱獄することに不信を感じていましたが、佐久間の本来の目的までは分かっていませんでした。
ちなみに浦田は佐久間の脱獄阻止のために、足かせと手錠のネジ穴を潰すように指示していましたが、部下がそれを怠っていました。
ネジ穴が閉じていないことを見た浦田のふつふつとした怒りの演技は見ものです!
【4回目】昭和21年
1回目の脱獄から2年後、畑でトマトを盗んでいたところに男ともみ合いになって持っていた包丁でその男を殺してしまったことがきっかけになって、今度は札幌刑務所に収監されます。
佐久間が冬(寒さ)に弱いことを知っていた浦田は冬場の脱獄はないと油断していた所を、今度は床下から塀の外まで掘って脱獄します。
この時の脱獄の理由は、包丁で人を殺した事件で死刑の判決を恐れだと言われています。
感想:面白いより切なかった
破獄、確かに面白かったんですが鑑賞後にはなんとも言えないモヤモヤが心に残るような作品でした。
すっきりしないモヤモヤではなく佐久間の不器用な性格ゆえにどんどんと苦しい状況になっていく様子が、観ていてすごくいたたまれなくなりました。
以前紹介した『刑務所の中』のようなほのぼのした作品ではありませんでした。
破獄は確かに脱獄系の作品にはなりますが、プリズンブレイクのようなドキドキハラハラな作品ではありません。
しかし、佐久間と浦田が再開の度にどんどん近くなっていく様子や佐久間の奥さん役である佐久間光(演:満島ひかりさん)の旦那を待つシーンなど、切ないシーンは本当に見ものです。
何よりも山田孝之さんの鬼気迫る演技や浦田に心を許している安堵の演技、拷問の時の苦痛の表情などが見られる、特殊な作品でした。
山田孝之ファンには必見の映画です!