あらすじ
結婚20周年の記念にヨットでの世界旅行に出た清子(演:木村多江さん)と隆(演:鶴見辰吾さん)だったが、あえなく無人島に遭難してしまいます。
しばらく夫婦二人で無人島で救助を待つ日々を送るけど、清子は次第に隆の無力感に嫌気を覚えるようなる。
そんなある日、さらに与那国島から厳しいバイト生活から逃げて来たフリーター集団16人の男が漂流してきて、清子の取り合いが起き、人間の汚さが浮き彫りになります。
また、密航が見つかって船から放り出されて漂流して来た6人の中国人も島に漂流してきて、日本人対中国人と言う島での戦争も勃発。
東京島は、島で唯一の女である清子がしたたかにこの過酷な生活を生き抜くリアルな作品になっています。
東京島の原作『アナタハンの女王』事件
画像参照元:ハワイ大学
東京島は第二次世界大戦末期(1945年頃)に、南洋興発株式会社というサイパン島に存在した日本の株式会社によって同社の社員である比嘉和子(ひかかずこ)と男性31人がサイパンのアナタハン島で共同生活をする実験の為に送り込まれたアナタハンの女王事件が原作になっている映画です。
アナタハンの女王事件では、1945年から比嘉和子が救出された1950年まで島での過酷な生活を強いられることになって、その間男性間で比嘉和子の取り合いによる死者や行方不明者も出ています。
結局、比嘉和子の救出後1951年に男性19人の救出も行われ、残りの男性は死亡・または行方不明となっています。
比嘉和子が救出後に島で結婚した男性は4人と答えている事からも彼女の過酷な状況を物語っています。
実際の比嘉和子はどうだったかは不明ではありますが、東京島を知った時は『壮絶な環境を必死に生き抜く女性』ってどんな姿なんだろうという見方でしたが、映画の清子はかなりしたたかな感じで、強い男性に付いて回る調子の良い女性でした。
くじ引きで清子の夫を決める
東京島では唯一の女性である清子の旦那をくじ引きで決めています。
原作の死者が出るような攻防ではなく割と平和な感じで旦那が決まる所に調子を狂わされました。
結局、この時昔の記憶がない森軍司(通称GM)が清子の旦那に収まりました。
ここでも清子は食料の確保などでGMを上手く使って過酷な生活を上手く乗り切っています。
すごい切り替えに見ていて呆れますよ。
若い頃の窪塚洋介も出演しています
与那国島から逃げて来たフリーター集団16人の中に清子を毛嫌う男ワタナベという男がいますが、窪塚洋介さんが演じています。
当時31歳の窪塚洋介さんでしたが、演技はあらゆる意味でキレていました。
このワタナベという男は、フリーター集団にも属さず一匹狼で、島でもちょっと浮いた存在です。
中盤に中国人が遭難してきた時もなぜか中国語が分かることから中国人のグループに入るようになります。
結局、ワタナベは中国人にも裏切られる羽目にあって踏んだり蹴ったりな役柄でした。
子供の父親は誰?
終盤、中国人のボスであるヤンの女になることを条件に清子も中国人のグループに入れてもらってイカダで海に出ますが、あえなく再度遭難し東京島に戻ってくる羽目になります。
この後、清子は妊娠するわけですが、GMの子供を妊娠したと言い回り再度GMの妻に戻ります。
GMは中国人と清子が海に出たことを知らないので清子の言い分を信じて清子を重宝するわけです。
本当のところ、この時の清子が身ごもった子供が誰なのかは映画の中では触れていませんが、おそらくヤンの子供です。
イカダの上でヤンと清子のそれっぽいシーンがありましたし、作品上ヤンの子供のほうがしっくりくる感じです。
GMを騙して再度島の女王という立場に返り咲く清子のしたたかさを垣間見ます。
東京島の結末
東京島の結末は、アナタハンの女王事件とは違いました。
中国人の東京島脱出失敗後にさらにフィリピン人の女性たちが台湾に出稼ぎに行く途中、大きな船が壊れてボートで東京島に逃げて来ます。
このタイミングで清子は出産を頼りない日本人ではなく中国人にお願いするべく、今度はヤンの子供を妊娠しているとして中国人のグループに取り入ります。
その後、フィリピン人たちは中国人にボートの修理をしてもらいボートで島脱出作戦を練ります。
この間、清子は男の子と女の子の双子を出産をフィリピン人立ち合いのもと行って無事に出産しています。
だけど、ボートの修理がほぼ完成した段階で日本人が再度中国人に戦争を仕掛け、どさくさに紛れて清子と清子の子供、フィリピン人で島の脱出を成功させて清子たちは無事に日本で平穏に生きることとなります。
ただ、清子の男の子の子供は島に置いていくことになって、その子供はGMの子として島で生活することになります。
結末は、島でGMを中心に暮らす人々と日本に戻った清子たちという構図で終わっていました。
東京島の撮影場所
東京島の撮影場所は奄美群島に属する離島の1つ徳之島で行われました。
撮影期間は40日間のオールロケに及び、大自然の中で終日行われたので過酷な撮影になったようです。
東京島では清子とワタナベは敵対する間柄ということもあって、窪塚洋介さんは撮影前に木村多江さんとはあえて会わずに徳之島入りをしたようです。
東京島での鬼気迫る演技は撮影前からの役作りによるものだったようです。
まとめ
東京島を見た素直な感想は、もうちょっとドロドロした映画だったら無人島に女性一人ってシチュエーションがスリルあるものになるのになって残念な感じでした。
清子のしたたかさがポップな感じになっちゃってて、実際の過酷な生活さが半減しちゃってる感じでした。
ただ、グロいシーンなどもありませんし(死人はでます)見やすい映画ではあると思います。
めちゃくちゃ面白いといった映画ではありませんでしたが、大作感は感じられます。
島での生活とか結構リアルでした。
一応、サスペンスジャンルにカテゴリー分けしましたが、次はどんなことが起こるんだろうといったドキドキ感はありません。
アナタハンの女王事件を大切に再現している作品という意味では見る価値はありますよ。