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あらすじ
無限に繰り返される空間に閉じ込められた人々を待ち受ける予測不能な運命を描き、世界各地の映画祭で注目を集めたメキシコ製スリラー。
刑事に追われる犯罪者の兄弟が、とあるビルの非常階段に逃げ込んだ。
刑事もその階段に足を踏み入れるが、1階の階段を下りると何故か最上階の9階が現われ、何度下りても9階にたどり着いてしまう。
そんな不可解な状況の中、兄が刑事に足を撃たれ、瀕死の状態に陥る。一方、車で荒涼とした大地を横断していた家族4人は、一本道なのに何度も同じ場所を走っていることに気づく。やがて、娘が持病である喘息の発作を起こし……。
出演は『アモーレス・ペロス』のウンベルト・ブスト、『父の秘密』のエルナン・メンドーサ。
ヒューマントラストシネマ渋谷、シネ・リーブル梅田で開催の『未体験ゾーンの映画たち 2016』上映作品。
参照元:映画.com
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覚えていればループから抜け出せる?
この作品では、無限に続く階段の世界と無限に続く道路の世界が描かれていますが、無限に続く道路の少年ダニエルが35年経過し大人になり、ダニエルの義父が死ぬ間際にループのヒントをもらいます。
パトカーに乗ってはいけない
とにかく名前を書いておく
しかし、ダニエルはその事を忘れてしまい、道路にあったパトカーに乗り刑事となり、今度は無限に続く階段の世界に突入してしまいます。
結構、これには驚きました!
まさかの無限ループの世界に連続で入ってしまうというまさに地獄!
だけど、ダニエルが義父の言う通りに自分の名前をどこかに書いて残しておけば、自分がダニエルだということも忘れることはなかったし、ループの世界からも脱出できたのかもしれません。
全てがループする世界のストーリー
映画の最後になって全てが繋がりますが、道路の世界⇒階段の世界⇒廊下の世界⇒線路の世界⇒イカダの世界、そしてまた道路の世界へとループして戻ります。
このループは35年周期で訪れて、誰かの死、ループ経験者、若者の3人がいると発動してしまいます。
映画の中ではダニエルが主人公になっていますが、主人公は常にループの経験者ということになりますね。
ダニエルの義父が『パトカーに乗ってはいけない』と未来のことを知っていたのは、その後のループの世界も以前にループ経験者から聞いていたためだと考えられます。
ループの世界は裏の世界
この作品では、ループの世界は過酷ではあるが、もう一つの現実世界の自分が幸せに暮らすためには必要な事だとしています。
必要な事ではあるが、ループから脱出するためにループ経験者は死ぬ間際に若者にヒントを掴ませて死んでいくわけですが、いつの時代の若者も老人からのアドバイスには耳を傾けずに、ひたすら目の前のループを脱出することだけに集中してしまいます。
まぁそれも分からなくはありません。
なんせ35年間同じ世界しか見ていなかったのに、突然新しい光景を目にするんだから、それはもう興奮します。
だけど、次の世界に入ると過去の記憶が塗り替えられちゃって、別の記憶とすり替わってしまうわけです。
そして、もう一つの世界の自分を幸せにするために裏のループの世界を必死に生きることになります。
無限ループの矛盾
映画のタイトルにもなっている『パラドクス』とは、パラドックスの意味で日本語に訳すと『論理的矛盾』となります。
有名なパラドックスの例としては、砂山を用いた例があります。
砂山から砂を少しづつ取り除いても砂山は砂山で、最後の砂一粒になってもそれは砂山と呼べるのか?
というものです。
要するに、何かに到達するためには、必ず過程が必要、その過程を達成する為には、また過程の過程が必要になるという考え方がパラドックスになります。
映画パラドクスでは、無限に続く階段と道路が象徴となっています。
しかし、この無限に続く階段と道路はかなり空想に近い設定になっていて、パラドクスというよりは無限ループの発想に近いですね。
無限ループとは、出口のない迷路のようなもので、そこに入ってしまったら脱出できない考え方です。
ただ、どうして無限のループが突如として現実世界に登場するのかが分かりませんでした。
そのループの世界に入ると、過去の記憶がなくなってしまうのも謎でした。
そして、死ぬ間際に過去の記憶が蘇って、ループの謎を解くと通常の現実世界に脱出できるようになるという設定も謎でした。
生きるのに必要な食料や水が永遠に湧き出てくる設定にも疑問でした。
強引な設定がどうしてもこの作品に矛盾を感じてしまう残念な所でした。
パラドクスの秀逸な点
パラドクスは無限に続く道路と階段のストーリーですが、この作品が秀逸な点は人間のリアルもしっかりと描いている点にあります。
道路の世界では、ダニエルの義父と母親が年老いても車の中でSEXしている様子がありますが、これもすることがなくなった男女の最後の欲求になるんでしょう。
かなり娘を亡くして廃人のようになっているダニエルの母親がかなり衝撃的でした。
また、階段の世界では年老いたダニエルが便や尿などを排泄するシーンがありますが、水入りのペットボトルにしていました。
こうゆうリアルのシーンによって、パラドクスの無限ループの世界にだんだんと入り込んでいくような感覚を覚えました。
パラドクス全体的な感想まとめ
少々の強引さは感じましたがラストの、謎解きの瞬間の爽快さは気持ちが良かったです。
道路と階段の限られたシーンではありましたが、飽きずに最後まで観ることができました。
謎を解いて脱出するキューブやリミットのような密室系サスペンス系ではなく、脱出できない無限ループの世界のストーリーでした。
結構面白かったですが、全ての展開でつじつまが合わず矛盾が生じてしまっている点がどうしても気になってしまいました。